薬膳から考える「胃を労わる食事」
3月になり、気温も上がって陽も長くなりました。今年の冬は寒さが強く、あまり積極的に外に出られなかったので、春になり外に出るのを待ち遠しく思っていました。そんな春を楽しむために、まずは縮こまった体を養いましょう。
「食べる」ことは生活の基本
私達は、日々食事を摂り、その食事から栄養素やエネルギーを得て生きています。食べたものを消化・吸収する機能を中医学では「脾胃」が司ると考えています。脾胃がしっかり機能していれば、栄養素や水分を吸収して基本的な体力や免疫力が養われ、身体が作られます。しかし、この脾胃が弱くなると食欲不振や胃痛、消化不良を引き起こし、エネルギー不足になって不調を起こしやすくなります。
また、脾胃は消化・吸収のほか、血液が血管から漏れ出さないようにしたり、内臓などをあるべき場所に固定する、全身の筋肉や四肢を養う働きがあります。歯ぐきからの出血や、内臓下垂や脱肛なども脾胃の調子が関わっているのです。
脾胃を労わる三原則
脾胃を労わる三原則は、次の3つです。
①冷たいものを控える
②甘いものを控える
③脂っこいものを控える
それでは、解説していきます。
冷たいものを控えましょう
「脾は暖を好む」という言葉があり、脾は冷えるとうまく機能しなくなります。夏に冷たいものを食べすぎた時、体中が寒くなって下痢になったことはありませんか?いつも冷たい飲料を好んで飲む方も、常温~ホットのものを飲むように意識しましょう。身体の冷えは脾だけではなく、いろいろなところの不調の原因にもなります。
特に女性は冷え性やひどい生理痛の方が多いので、日ごろから冷やさない生活を意識してほしいです。
甘いもの・脂っぽいものの食べすぎには注意
脾は「湿」の影響を受けやすく、特に湿気の多い梅雨の季節には消化器官の不調が多くみられます。湿は自然に発生する湿気も含まれますが、甘いものや脂っぽいものの食べすぎも「湿」を生み出すと中医学では考えられています。
湿の影響で脾の動きが悪くなると、うまく消化吸収かできないほかに、下痢やむくみといった症状が現れることがあります。また、重だるく、頭がズーンと痛いといった症状もあります。
脾胃を労わる食養生
脾胃を補い、機能を高める食材
甘いものの食べすぎは「湿」を生み出しますが、お米や芋類といった自然の甘味を持つ食材は脾胃の働きを高め、生命活動の源でもある「気」を補います。また、大豆製品やきゃべつ豚肉もお勧めです。
脾胃の湿を取り除く食材
キュウリや冬瓜などの瓜類は身体の余分な水分を取り除く作用があります。緑豆もやしや春雨などの豆を使った食材もいいですね。この湿を取り除く食材は身体を冷やす作用があるものが多いので、加熱して食べたり葱や生姜などの体を温める食材と一緒に食べることをお勧めします。
脾胃を労わる食生活は、一汁一菜のご飯とお味噌汁を中心とした食事をお勧めします。脾胃の機能を高めるお米に粟や黍、黒米など雑穀を加えた雑穀ごはん、サヤインゲンと豆腐とキャベツのお味噌汁、きゅうりと茄子の糠漬け。これをしっかり噛んで、消化しやすくいただきます。最近はインスタ映えなど見た目が華やかな食事が好まれますが、毎日続けられる簡単なごはんが中心の一汁一菜はいかがでしょうか?
担当管理栄養士:Tomoyo