フィットネスクラブの管理栄養士がすすめる運動前後の食事のコツ
・仕事終わりのトレーニング後、夜何を食べたらいい?
・運動後すぐに食べると太るの・・・
・夕食摂るなら運動前、それとも運動後?
・あまり時間がないけど運動前にも何か食べたほうがいい?
これらは私が勤務するフィットネスクラブでよく受ける質問です。会社帰りにトレーニングをして帰宅するとどうしても遅い時間になってしまいます。
「夜遅く食事をすると太りやすいので就寝3~4時間前には食べ終わるようにする。」
こういうことをよく耳にしている方も多いので悩まれているようです。
運動した後はエネルギー源である糖質が枯渇した状態ですので、何も食べなければ体重は落ちます。しかしこのような栄養不足は、筋肉量や骨量も減らしリバウンドにつながりやすくなります。また、内臓の機能低下、集中力・気力低下などから、せっかく運動して体型や体調を整えたいと思っているのにも関わらず、疲れやすくて仕事に集中できなくなってしまい、トレーニングもやめてしまうということになりがちです。
かといってせっかく運動したのに食べ物の選択によっては太ってしまうなんてことになっては困りますよね。
それでは、トレーニングの効果を活かすためにどのように食べればいいのでしょう。
トレーニング後はたんぱく質と糖質を補給することが大切
運動後30分以内は、成長ホルモンが盛んに分泌されるため、筋肉の合成が促進され最も効率よく栄養を取り込める「ゴールデンタイム」と呼ばれています。この時運動による筋損傷とエネルギー源である糖質が減ったガス欠状態では、筋肉がどんどん分解されてエネルギーとして使われてしまいます。
筋肉の分解を止め合成を促進させるために大切になる栄養素は「糖質」と「たんぱく質」です。糖質には、減ったエネルギーの補給と筋肉の分解を防ぐ以外に、もう一つ役割があります。それは、インスリンというホルモンを分泌して、糖質やアミノ酸などの必要な栄養素を筋肉中に取り込むことです。
下のグラフ(Zawadzki.KM 1992)から見て分かるように、運動後に糖質とたんぱく質、どちらも一緒に摂った方が筋肉の回復が早いのです。
運動後の栄養補給がないと筋肉は分解が進み、せっかくの体づくりにマイナスなのです。痩せたい場合も、食事を抜いたり、極端に少なくすれば体重は落ちますが、筋肉も減り基礎代謝の低下でリバウンドを起こすリスクも高くなるので、長期的にみると逆効果です。
高強度の筋トレや長距離の10㎞を超えるランニングをした後は、夜であっても栄養補給は必要です。但し、プロテインをぐっと飲んでたんぱく質補給は完了。あとは早く寝るだけというのは間違いです。トレーニング後にプロテインだけを摂ってもあまり意味がないのは、前述の通りです。
体づくりのポイントは、3度の食事で血液中のアミノ酸量を常に一定キープし、速やかに筋肉の材料として適所に送り込めるかです。プロテインはあくまでも食事の補完と考えましょう。
軽い運動の場合(20~30分程度のウォーキング)であれば筋肉の損傷も少ないと考えられますので、ゴールデンタイムをそれほど気にしなくても夕食で栄養補給すればいいでしょう。ダイエット中なら高たんぱく×低脂質を意識した早めの夕食や軽食を摂ってその後のトレーニングというのもいいかもしれません。
軽食のすすめ
運動後に栄養補給は大切といっても仕事で運動後の夕食が遅い時間になってしまうなら、まとめて摂らなくても夕方に軽食を摂るのがお勧めです。
軽食のメリットをまとめてみました。
寝る前にカロリーを摂りすぎなくてすむ
仕事帰りに運動をして帰宅すると遅い時間になってしまい、昼食を食べてからかなり時間が空いていて体はガス欠状態、それでついつい食べ過ぎてしまうということも起こりがちです。夕方に軽い軽食を摂って寝る前のカロリーの摂りすぎを防ぎましょう。
トレーニングの質が上がる
空腹状態ではトレーニングの強度も量も上げられません。脳の栄養源である糖質も運動中の集中力を維持するために必要です。
では、軽食や夕食に何を食べたらいいのでしょうか。
夕方、軽食としておにぎりやサンドイッチのような主食となるものやバナナなどのフルーツ。帰宅後は低脂肪で胃の負担にならないような消化の良いおかずだけ又は主食も少量。たんぱく質源となる肉類と効率的に筋肉をつくるために必要なビタミン、ミネラル源となる野菜を組み合わせれば体づくりに必要な栄養バランスが整いやすく、カロリーも控えられます。
例えば、チキンと野菜のスープ、豚しゃぶサラダなど。油を控えれば次の朝しっかり食欲もわいて一日のリズムも整いやすくなります。
できることからスタートして、質の良い体を作りましょう。
担当管理栄養士:中川洋子
参考文献
坂詰真二・石川三知 筋トレと栄養の科学 新星出版社 (2015)
栄養とアスレティックパフォーマンス 日本臨床栄養協会誌 (2017)
Our Age https://ourage.jp/column/healthy_gohan/60207/2/(2018.03.10閲覧)