“筋肉貯金”できていますか?サルコペニアにならない体づくり
人間の体は、加齢とともに骨格筋量は減少し筋力も低下していきます。
30歳代から年間1~2%ずつ減少し、80歳ころまでには約30~40%の筋肉が失われるといわれています。まだ若いからいいと思っているかもしれません。あまり動かない方、仕事で座りっぱなしの方、運動不足の方、このまま続くとサルコペニアの危険があるかもしれません。
将来寝たきりにならないためにもサルコペニアにならない体づくりを目指していきましょう。
サルコペニアとは
欧米やアジアでその定義は多少異なってはいますが、サルコペニアとは「加齢に伴い、握力・歩行速度いずれかの低下を満たし、骨格筋量の減少が認められる場合」と定義されています。
さらに分類すると、筋肉量の減少のみを「プレサルコペニア」、筋肉量の減少に筋力または身体機能の低下のどちらかが伴うものを「サルコペニア」、筋肉量、筋力と身体機能の3つの低下が伴うものを「重症サルコペニア」と分類されます。
要するに筋肉量が減ってきて、動けなくなる、歩けなくなる、寝たきりになりやすくなる、病気になりやすくなるといった、負のスパイラルが起きやすくなるということです。
診断基準
アジアの診断基準を用いると①歩行速度は0.8m/秒以下のスピード、②握力は男性が26kg以下・女性が18kg以下、③四肢骨格筋量が男性:7.0kg/㎡以上・女性:5.4 kg/㎡となっています。
③の四肢骨格筋量は機械を使って筋肉量を測るもので、機械がある施設で判断しないといけません。その代わり他の指標では下腿周囲長(ふくらはぎ回り)を測ることによって状態を見ることもできます。下腿周囲長が男性:30㎝以下・女性20㎝以下の場合で①か②が伴うとサルコペニアと診断されます。
サルコペニアのリスクと予防・改善の視点
今のあなたの筋力・体力が少なければ将来寝たきりになり、病気になるリスクが高くなります。サルコペニアと診断される方は、主にやせ型の方が多くなってきます。しかし、体重が重いとより動かなくなり、肥満者もサルコペニアになるリスクが高いといえます。
筋肉がなく、脂肪が多い状態では体を支えられなくなり、転倒・骨折のリスクも高くなります。あなたのお腹、お尻は垂れていませんか?歩き方はおかしくないですか?若いから、普通に歩けるから大丈夫と思っていても、運動不足が続くと、年々筋肉量は1~2%落ちていくので気を付けてください。
サルコペニア予防・改善のための運動の視点
運動が筋肉量や身体機能を上げるのは言うまでもありません。運動の強度や頻度は、週2回以下、最大酸素摂取量40~45%以下(ややきついと感じる運動量)、10分以下の運動では体力の維持・向上は効果がないという見方が優勢となっています。では、これをすべてクリアしないといけないのではなく、まず運動習慣をつけるというのがポイントとなってきます。外に出かける、階段を上る、足踏みをするなど、簡単な動作でも筋肉に刺激を生むことができます。
一つ簡単な運動をお教えします。
椅子に座り、手を椅子の座っているお尻の後ろに置きます。
その状態で両足、または片足を浮かせたまま10回ゆっくり上下させるだけでもしっかりお腹の筋肉を使うことができます。まずは動くことを意識しましょう。
サルコペニア予防・改善のための栄養の視点
筋肉を減らさないためにも、食事はとても大事になります。多くの研究から見ても、たんぱく質の摂取は有効性があるとされています。筋肉量を維持するためには、最低でも1.0g/kgのたんぱく質量が必要とされています。
量としては、肉魚の場合、片手掌分で20g前後。卵・大豆製品・乳製品なら手のひらいっぱい分でおおよそ15g前後のたんぱく質が摂れます。まずは自分の体重分くらいのたんぱく質を摂取できるようにすると、予防・改善につながってくると思います。また、たんぱく質だけでなく、野菜や果物などのビタミン・ミネラルもとるなど、バランスもしっかりとってください。
運動が嫌いな方、食事がうまくできない方でもまずは自分の体を見直して、未来の自分を思い描いてみてください。病院では多くの方が寝たきりになっています。高齢になると運動もなかなかできず、筋肉の発達もしにくくなります。そのためにも、自分自身に筋肉と身体機能の維持の貯金をしていくと、寝たきりにもならず、ずっと歩いて過ごせることができると思います。
担当管理栄養士:大嶋浩俊
参考文献
・臨床栄養 サルコペニア診療ガイドライン2017の要点(2018.1) 医歯薬出版株式会社
・公益財団法人長寿科学振興財団 健康長寿ネット
サルコペニアの診断https://www.tyojyu.or.jp/net/byouki/sarcopenia/shindan.html (2018.10.1閲覧)