アスリートにとってのミネラル摂取と役割
前回のビタミンに続き、アスリートにとって大切な栄養素は糖質、タンパク質だけに限らずミネラルも大切な栄養素です。ミネラルは独自の働き以外にも、他の栄養素の働きを助けることや、身体の機能を調整する大事な栄養素です。
ミネラルとは?
生体を構成する元素のうち、酸素(О)、炭素(C)、水素(H)、窒素(N)を除く元素の総称です。
ミネラルの働きとは?
ミネラルには大きく分けて骨や歯など「生体組織の構成成分」としての役割と体液の恒常性を維持するなど「生体機能を調整する」働きがあります。
一般的機能は、骨や歯の構成成分、有機化合物の構成成分、筋肉の収縮、神経の興奮性の調整、酵素の活性化作用、生理活性物質の構成成分となります。
アスリートに必要なミネラルは特に鉄・カルシウム
アスリートには鉄、カルシウムといったミネラルが不足傾向にありますので、役割を考え、しっかりと摂取していきたいです。
鉄について
鉄は、血液中に酸素を運ぶヘモグロビンを構成している成分です。ヘモグロビンは呼吸によって肺から取り入れた酸素を全身の細胞に運ぶという、大事な働きをしています。ところが、激しい運動により呼吸が増えると、酸素をより多く消費します。それに加えて、大量の汗とともに鉄が失われるため、貧血になることが考えられます。貧血に悩む選手にとっては持久力の低下などで競技に影響が出る可能性がありますので、鉄が不足しないようにしましょう。
鉄を多く含む食品は、レバー、しじみ、あさり、ひじき、緑黄色野菜、大豆、大豆製品などです。鉄はもともと吸収率のよくない栄養素ですので、タンパク質、ビタミンCを多く含む食品と組み合わせると吸収率が良くなります。例えば、ひじきのサラダでビタミンCの多い野菜を一緒に摂り、レモンをドレッシングに使用することなどすると良いでしょう。
カルシウムについて
カルシウムは、生体内で最も多量に存在するミネラルです。99%が骨や歯に、約1%が細胞内に、約0.1%が血液中に存在します。骨はカルシウムの貯蔵庫の役割もあります。カルシウムは、骨と歯の主成分となる以外にも、神経の刺激の伝達や筋肉の収縮に不可欠ですので、不足すると神経の興奮が高まり、筋肉が弛緩します。また、血液凝固、細胞の情報伝達、酸素の活性化、体液のpHの調節などにも関与しています。
カルシウムを多く含む食品は、牛乳、乳製品、小魚、緑黄色野菜などです。効率よく摂取するためには、ビタミンDがカルシウムの吸収を助けます。ビタミンDは、サケ、サバ、ヒラメなどの魚やキノコ類に多く含まれています。例えば、サケのチーズ焼きにすることや、キノコミルクスープなどにすると良いでしょう。
鉄・カルシウム以外に大切なミネラルとは?
ミネラルの中でアスリートにとって、鉄・カルシウムの摂取が大切と言えますが、亜鉛も大切な栄養素です。
亜鉛について
亜鉛は体内に2~4g存在し、多くの酵素の成分となっています。タンパク質や遺伝子伝達物質DNAの合成や糖質の代謝、インスリンの合成、免疫反応などにかかわる酵素の成分として、働きをサポートしています。偏食の選手や加工食品に頼り過ぎていると亜鉛不足に陥ります。亜鉛が不足すると貧血、うつ状態になる可能性があるのでパフォーマンスに影響してくる可能性があります。
亜鉛を多く含む食品はカキ、牛もも肉、豚レバーなどに多く含まれています。加工食品に添加されているポリリン酸(結着剤、乳化剤)などは亜鉛の吸収を妨げるので、注意しましょう。
ミネラルは、少量をバランス良くとることが大切です。3回の食事もしくは補食を活用し、不足しないように摂っていきたい栄養素です。
担当栄養士:中田恵理
参考文献
・中村丁次「栄養の基本がわかる図解事典」成美堂出版(2015)
・柳沢香絵「アスリートのためのスポーツ栄養学 栄養の基本と食事計画」株式会社学研パブリッシング(2015)
・鈴木志保子「基礎から学ぶ!スポーツ栄養学」株式会社ベースボール・マガジン社(2016)
・鈴木志保子「理論と実践 スポーツ栄養学」株式会社日本文芸社(2018)