動脈硬化と油脂の関係性
冬も本格的になってきました。冬の病気と言えば、インフルエンザや心筋梗塞・脳梗塞など、感染に関するものや、心臓や血管に関するものがニュースなどでも多く取り上げられます。今回は血管疾患の動脈硬化と油脂の関係性についてお話したいと思います。
動脈硬化の原因
動脈硬化の危険因子としては、加齢・家族歴・生活習慣病・喫煙・メタボリックシンドロームなど多岐に渡ります。また、生活習慣・食習慣が乱れていたり、運動不足、睡眠不足、ストレスの増加などによっても、知らぬ間に血管に負担がかかってしまいます。血管が硬くなったり、詰りやすくなることで動脈硬化のリスクが大幅に上がってしまうのです。
動脈硬化予防のための生活習慣の改善方法
日本動脈硬化学会から、動脈硬化性疾患予防ガイドライン2017年版が出され、予防のための改善習慣が出されました。
①禁煙し、受動喫煙を回避する。
②過食と身体活動を不足に注意し、適正な体重を維持する。
③肉の脂身、動物脂、鶏卵、果物を含む加工食品の大量摂取を控える。
④魚、緑黄色野菜を含めた野菜、海藻、大豆製品、未精製穀類の摂取量を増やす。
⑤糖質含有量の少ない果物を適度に摂取する。
⑥アルコール過剰摂取を控える。
⑦中等度以上の有酸素運動を、毎日合計30分以上を目標に実施する。
体を適正体重に戻すこと、血管が詰まりやすい環境を取り除くことが改善には一番の近道になります。上記7つをしないといけないのではなく、1つでもできるようになれば改善につながります。
動脈硬化と油脂の関係性
油脂は動脈硬化の敵と思われる方も多くいらっしゃると思います。油はすべて悪ではなく、上記の生活習慣の改善と同様に食習慣で油脂を考えるだけでもまた変化が出てきます。
動脈硬化と飽和脂肪酸
飽和脂肪酸は脂身の多い肉やラード、バターなど動物性脂肪に含まれています。飽和脂肪酸量を減らすだけでも動脈硬化の改善にもなります。さらに飽和脂肪酸から多価不飽和脂肪酸に変えることでより改善につながりやすくなります。脂身の多いお肉ではなく赤身肉を選んでいくとよいです。
動脈硬化とオメガ3系脂肪酸
オメガ3系脂肪酸は、代表的な脂肪酸としてはα-リノレン酸があり、α-リノレン酸は、人の体内でつくることができない、必須脂肪酸の一つです。α-リノレン酸は、体内に入ったあと、代謝されてEPA、DHAとなります。植物由来の油では、えごま油や亜麻仁油に多く含まれるほか、青魚含まれるEPA・DHAもオメガ3系脂肪酸です。これらは、血液をサラサラにする効果があり、血管死の減少、コレステロールの減少、脂肪の燃焼効果など血管疾患抑制に期待ができます。
動脈硬化とオメガ6系脂肪酸
オメガ6系脂肪酸は、代表的な脂肪酸としてはリノール酸があり、リノール酸は、人の体内でつくることができない、必須脂肪酸の一つです。植物由来の油では、コーン油、大豆油など、身近な油の主成分でもあります。オメガ6系脂肪酸を多く摂取することと、動脈硬化には大きな関連性はみられませんが、脂質の数値の低下は期待できるとされています。オメガ6系脂肪酸の摂取量をオメガ3系脂肪酸に変えてあげると、動脈硬化にも有効的になります。
動脈硬化とオメガ9系脂肪酸
オメガ9系脂肪酸は、代表的な脂肪酸としてはオレイン酸があり、オレイン酸は、油から取り入れるほか、体内でも合成されます。代表的な油にオリーブオイルがあります。オメガ9系脂肪酸を総カロリーの12%以上の摂取をしても体重や血圧などは改善がみられますが、脂質の検査値には優位な影響を示さないというデータが出ています。また、炭水化物をオメガ9系脂肪酸に置き換えた場合は脂質の検査値の改善が大きく見られます。
上記を踏まえると、飽和脂肪酸の摂りすぎを抑制、炭水化物の摂りすぎを抑制、オメガ3系脂肪酸への置換、そして7つの習慣を心がけると、より動脈硬化に有効的であるように思います。
油脂の特性はそれぞれあります。構造が違うため、どれも個性として捉えるといいと思います。摂りすぎ、少なすぎでは体にもよくありません。まずは摂っていないなら、とる習慣をつけてみるのも一つの方法です。油脂は体重や検査値を変える一つの食材として捉えていただき、油脂で強い血管を作っていって下さい。
担当管理栄養士:大嶋浩俊
参考文献
・Jオイルミルズ 脂肪酸の種類について
https://www.j-oil.com/oil/type/fa/(2018.11.28閲覧)
・臨床栄養 動脈硬化性疾患予防ガイドライン2017年版をひも解く(2018.11.1) 医歯薬出版株式会社